外資コンサルタント, Ph.D. (仮)

新卒入社した博士の記録。秋から勤務です

就職したい博士はインターンに行け

博士学生がインターンに行くべきだと思う理由は,

  1. 人間社会に興味がある博士だ,ということを見せられる

  2. 専門の幅を拡げ,深みを出せる

  3. 雇ったときのイメージをしてもらえる

の3つです.

全てに共通する目的は,雇う側(面接官)に安心・納得してもらうことです.採用する側は,前向きな採るべき理由だけでなく,採っても問題ないと言える根拠も欲しがっているからです.

人間社会に興味がある博士,ということを見せる

人口100万人あたりで見た時,2012年に日本で学位を取得した人数は以下のようになります.

  • 学士号:4,438人 (米: 5,862人)
  • 修士号:607人 (米: 2,395人)
  • 博士号:125人 (米: 255人)

    data.nistep.go.jp

日本がことさら少ないのでは!?という疑問を払拭するため,米国の数字も併記しています.日本にせよ米国にせよ博士号取得者は絶対的に少ない上,その多くが学術界・研究所などに就職するため,産業界,特に非研究職採用の場面では「えっ,博士取るの!?すごいねぇ!(へぇー,見たことないよ…なんだこいつ…)」という反応をされます.

そして,「博士」というラベリングをされます.これは避けられません.

これは本当に厄介です.本人がどんな人物であれ,俗説的な博士像を一度重ねられてしまうと,明示的に否定しない限りは「どうせ博士はXXだし…」と曲解されてしまう恐れがあります(というか,基本的には曲解される).

大学の外では,想像以上に「博士」というのは強烈なラベルです.「芸能事務所に所属してました」と言うのと同じ感覚だと思っています(個性が強そう,一芸はありそう,一般社会経験が極めて乏しそう).

インターン,殊更長期のインターン経験は,社会で働くということを理解しようとする姿勢があり,かつ経験もしたことを示すことができます.就活してるんだし当たり前でしょ…そこは共通理解でしょ…と思うかもしれませんが,当たり前が通用する人は博士課程入らないです.修士までで就職します.

「思うところあって博士課程なぞ入ってしまいましたが,ちゃんと社会で働く気概はあるんです,経験も無くはないのです」

と,きちんと履歴書を通して伝えてあげると,面接官は安心します.

専門の幅を拡げ,深みを出せる

博士学生が面接を受けるとき,甘美な罠が待ち構えています.

「あなたの経験について教えてください(研究について知りたいわけではない)

博士学生である以上,ここで研究以外の選択肢はほぼありえないわけです.研究の話はいくらでも喋れるし,喋りたくなる上に,なにより面接官が期待しています.研究の話をしない/できない場合は,「ただ大学にだらだら残っちゃった人」にしか見えません.

その一方で,面接官は人物像を見たいなのです.「博士だから」研究について沢山喋ることを期待するし,研究以外には特段の話もないだろう,という忖度のもと,研究の話を聞いてくれるだけなのであって,人物像が見えること,そしてそれが採用基準に適合しているかどうかが重要な問題なのです.

インターン経験は,博士研究に彩りを添えてくれます.研究テーマの応用研究をやってみたり,扱う問題は同じでも分野・アプローチを変えてみたり,やり方はいくらでもあると思います.専門一本槍で視野狭窄に陥ることは,たとえ研究者になるとしても好ましいことではないはずで,いわんや産業界です.

「私の専門は環境工学で,次世代の発電システムを開発・設計していました.この発電システムは振動の位相差を活用して…」

と専門の話をひたすらするよりも,

「私の専門は環境工学で,次世代の発電システムを開発・設計していました.また実際に社会実装する際の問題にも興味があり,NGOで調査研究もしました」

という方が,20代後半の人間が喋る内容として,成熟していると思いませんか?

雇ったときのイメージをしてもらえる

特に非研究職の場合,

「博士号持ち(20代後半高学歴なのに新卒)なんて採用してどうすんの…(困惑)」

という思いが必ずあります.よっぽどの理由がない限り,あるいは十分に安心してもらえる限り,博士を採用することはありえません.そういった意味では,博士の新卒≒中途入社で業種変更のような厳しさがあるかなぁ,と思います.

中途の方に比べて有利なところは,そうは言っても新卒なので,新卒採用に堂々と入っていけます(博士採用を明言していなくても全然イケます).ちゃんとアピールが通じれば,新卒カード使えます.不利なところは,20代後半にもなって「普通のサラリーマン」経験が全くない点です.会議や根回し,アポ取り,議事録作成,いろいろなチャネルを使った合意形成,中長期戦略や人事や法務やなんやかんや…世間の大半の方々が肌に馴染んているそれらを全く知らないわけです.その点においては正社員経験のないフリーター(27)と同等と言わざるを得ません.そりゃぁ,いくら頭が良さそうでも躊躇しますわな.

 インターンでの就業経験は,多少なりとも組織の中でコミュニケーションを取りながら,自分の能力を上手く活かし,成果に繋げるプロセスを経験できます.それは研究室での活動よりも,まどろっこしく,歯がゆい,イライラする経験だと思います.それに対処しながら活躍することができる,純粋培養ではない強い博士だ,というアピールは,きっと面接官の心象にプラスにはたらくはずです.

研究とは違うことをやる意味

自分の専門/研究とは異なることをするのに抵抗がある方も多いかと思います.個人的には,ある程度の関連性を自分で見いだせて説明できる範囲であれば,どんどん専門外のことをやるべきだと思います.

というか,専門ガー自分の研究ガーとか言うのが許されるのは学生のうちだけでは? アカデミック一丁目一番地の学振PDが「研究環境を変え」「新たな研究課題に挑戦する」ことを要件にしていて,研究機関移動の要件については実質的な研究機関移動と認められるかガッツリ審査しているわけですから,テーマや取り組む範囲を拡げていくことは一人前の博士,というよりは一人前の社会人として必須のはずなのです.その時期がいつか,どこか,というだけであって.

(4) 特別研究員-PDについては、博士課程での研究の単なる継続ではなく、研究環境を変えて、博士課程での研究を大きく発展させ、新たな研究課題に挑戦することができる研究計画を有するもの。 

 選考方法 | 特別研究員|日本学術振興会

産業界を選択肢に入れている博士には,キャリアとしてのインターンはとても重要だと思います.